JSTのCRESTプロジェクト



最終更新日:2005年(平成17年)1月28日

科学技術振興事業団(JST) 戦略的創造研究推進事業の中の,戦略目標「情報処理・通信における集積・機能限界の克服実現のためのナノデバイス・材料・システムの創製」の下の研究領域「超高速・超省電力高性能ナノデバイス・システムの創製」(研究総括:榊裕之東京大学生産技術研究所教授)では,

【研究領域の概要】
この研究領域は,従来のデバイス・システムに対して,ナノスケールの超微細構造形成技術や革新的ナノプロセス,および超集積化技術を活用することにより,これまでの情報処理や通信システムの性能を飛躍的に高めるデバイス・システムの創製に係わる研究を対象とするものです。具体的には,情報伝達の超高速化や広帯域化と超省電力化に向けた新規デバイスの構造・材料に係わる研究,極微デバイスが直面する限界に挑戦する革新的なナノ素材やナノプロセスの研究,極微デバイスにおける物理機構の解明と制御に係わる研究,超微細構造の活用により従来の光デバイスの性能を凌駕する新しいナノ構造フォトニクスデバイスの創製に係わる研究,および,これらの関連研究等が含まれます。
 

【研究総括の募集・選考に当たっての考え方】
この研究領域では,これまで情報・通信技術を大きく前進させてきた従来のデバイス・システムに対して,革新的ナノ構造やナノプロセス,ならびに超集積化技術を活用することにより,情報通信用のナノデバイス・システムの性能と機能を飛躍的に高めたり,ナノデバイスの作り易さや使い易さを抜本的に改善するための研究提案を期待します。このため,革新的なナノ素材やナノプロセスの活用によって極微デバイスの限界を破る研究,極微デバイスを支配する物理機構を解明し新しい制御法を開発活用する研究,情報通信用のデバイス・システムの超高速化や超省電力化のための新規ナノ材料やナノ構造の研究,飛躍的機能を持つ新しいナノ構造フォトニクスデバイスなどの研究が進むことを期待しています。従来技術の延長ではない,新しい発想に基づく画期的な研究であり,将来の実用化に結びつく提案を期待します。

という方針の下で,研究提案の公募が行われました。

そこで,我々の研究計画「量子細線レーザーの作製とデバイス特性の解明」(原題は「量子細線レーザーにおける電子間相互作用と低次元性」)が採択され,平成14年11月1日から5年間の研究プロジェクトが始まりました。研究概要は,オフィシャルには,
構造均一性の極めて高い半導体量子細線を用いて,量子細線レーザーを作製し,低発振閾値電流や高微分利得などの超高速・超省電力に直接結びつく高性能化の実証を行います。また,量子細線の擬1次元系に特徴的な物性・デバイス特性を解明するための物理計測を詳細に行い,量子細線レーザー発振の起源・特性および擬1次元系高密度電子・正孔状態での多体電子相関とそれが引き起こす光学過程の新効果・新現象を,実験と理論の両面から明らかにします。
となっています。

研究代表者は,東京大学物性研究所の秋山英文(あきやまひでふみ)助教授です。小川は「主たる共同研究者」という立場です。この研究計画は,実験を秋山研究グループ(東大物性研),理論を小川研究グループ(阪大理),製品化・実用化をアトー株式会社がそれぞれ分担し,3者の共同研究の形をとっています。人数的にも金額的(5年間で2.5億円弱くらい)にも,割と小さな研究計画です。研究計画の主眼は「量子細線レーザー」に有りますが,実験や応用・実用化関連は,その一切を秋山研究グループとアトー株式会社に任せ,理論的研究のすべてを小川研究グループだけで行います。注意すべき事は,文部科学省や日本学術振興会の科学研究費補助金(科研費)などのボトムアップ型グラントと異なり,これはトップダウン型グラントであることです。

研究計画全体の中での理論部門(小川研究グループ)は,「量子細線レーザーの発振特性とそれに対する電子相関・低次元性・非平衡性の効果の解明」を目的とするように位置づけられています。レーザーや光デバイスなどの応用面にこだわる必要はなく,一言で言えば,(擬)1次元高密度電子-正孔系の量子状態とその動的応答の様々な側面を明らかにすることが任務です。つまり,多体電子論,低次元量子系,強相関電子系,非平衡開放系,動的非線形応答などの量子統計力学の基礎的パートをカバーし,物理的素過程を解明し,新現象を発見的手法で探索します。

このような理論的研究を推進するために,JST-CREST小川研究グループを構成し,研究活動を行います。JST-CREST小川研究グループのメンバーは,本研究プロジェクトに関係の有る用務での出張旅費を支給することができます(大学院生でもOK)。JST研究員(PD)は,この研究プロジェクトの研究に100%従事してもらいますが,他のメンバーもできるだけご協力をお願いします。メンバー同士の「相互作用=相乗効果」によって,非線形的に(superlinearに)研究成果が進展し理解が進むと思います。

理論的研究テーマのキーワードは,「低次元・1次元」「量子」「多体効果・(強)相関効果」「非平衡」「動的応答」などです。「低次元性」+「電子相関」+「非平衡性」を鍵として,擬1次元高密度電子-正孔系での物理的素過程を理解し,その量子状態や非平衡相の動態の解明に結びつけるのですが,そこで終わっては不十分です。終局的には必ず,そのような量子相の「動的応答や光学応答の理解」にまで進んでください。そうすれば,秋山研究グループでの実験との接点もできますし,本研究プロジェクト全体としての成果の整合性も良くなります。

個々のメンバーの研究テーマや小川研究グループ内での分担・分業体制は,メンバーと詳しく相談しますが,トップダウン型グラントであるとは言っても,研究する本人に興味がないテーマで創造的研究ができるはずはありませんので,各自の興味や力量や技や研究に使える時間などを勘案しながら,相談して決めます。有意義な5年間になるように,私も皆さんも前向きに努力して,研究を楽しくエンジョイしたいと思います。よろしくお願いします。頑張りましょう。